最適な脱力やリラックスに必要な声の闘争による相互筋肉支持
発声においての脱力とリラックスは結果的な感覚です。この結果的な感覚は、力みの全身へのバランスのとれた分配です。一カ所に力が集中すると力みになり、声が潰れたり歪んだりします。この一カ所に集中した力を全身で上手く分かち合うことが大切です。
脱力やリラックスを“力を抜くこと”と解釈して実践してしまうと、支えの無い弱い声になります。発声はバランスの良い安定した“力み”の全身への分配が大切です。
(ポイント1)
・発声は基礎の練習を繰り返して、自然で安定した発声を「自動的な感覚」で行えるようにする必要がある。
・基礎を全身の筋肉に記憶させ、歌うときは「何もしていないような脱力に近い感覚」にすることが大切。
・最初から脱力やリラックスをすると、発声は偏ったり崩れたりする。脱力やリラックスは結果的な感覚。喉を開けることも結果的な感覚なので、最初の内は喉を開けない方が良い発声の基礎作りになる。
(ポイント2)
歌うときの脱力やリラックスは部分的に間違い。筋肉はほどよく緊張させる必要がある。ほどよい緊張が全身を包み込んでいると最適なバランスになり、心身ともに楽に感じる。緊張の偏りが声の力みになるのでバランスをとり続けることが大切。特に、音の高さや母音の違いなどで大きく変化するのでその都度修正が必要。
《姿勢と体幹》
発声は精神的な側面より肉体的な側面を優先すると良いです。
良い声で歌うためには、体幹(おもに全身の内側の筋肉)の安定した姿勢が大切です。良い姿勢は、全身の内側や下半身、特に足の裏から作る意識が必要になります。基本的に太ももの内側に力を適度に込めて、力を外側に逃がさないようにすると良いです。
全身で歌うときは、筋肉の内側から外側へ向かう力と全身の下から上へ向かう力が大切です。また、それらの逆向きの力も同時に必要になります。
歌うときは体幹と下半身を安定させて、発声時の負担を全身で受け止めましょう。負担が偏ると、その偏りを補おうとする力が生まれて、バランスが不安定になります。その偏りや不安定の結果として、のどや声の力みが生まれます。声を力ませないように、全身でバランス良く負担を分配させて受け止めながら歌うことが大切です。
《横隔膜及び腹横筋と腹斜筋について》
横隔膜は肺の下にありますが、横隔膜の付け根は背中の内側の筋肉の一部です。背中の内側の筋肉が一番下の肋骨まで伸びて内臓を隔てる膜となります。横隔膜を使った呼吸は、背中を使っている感覚が必要になります。
横隔膜は下げたままが良いとされる場合が多いですが、歌い方によっては上げている、あるいは柔軟に上下している必要があったりします。
呼吸は横隔膜を固めないように胸郭全体、あるいは肋骨下部を適度に開いていると良いです。
呼吸や声を出すときの腹横筋と腹斜筋は、横隔膜の機能を支えて補助しています。腹横筋は腹部を一周するようにあります。腹斜筋は腹部の横と背中側にあり、腹横筋を覆うようにしてあります。また、腹斜筋は胸部の一番下の肋骨に付き、背中側まで延びています。主要な呼吸筋である肋間筋の中で、一番下にある肋間筋の一部が腹斜筋の一部になっているので、腹横筋と腹斜筋は重要な呼吸筋といえます。
支えのある声で歌うときは、腹部一周の広がりを維持し、しぼまないように腹部を少し張ると良いです。安定した呼吸は、特に背中の支えの維持が必要になります。
ここの文章は、私が執筆したKindleのボイトレ本の内容から一部を抜粋し、改変したものです。
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